【大学教育】AdobeFirefly×教育実践事例インタビュー|AI活用のメリットとは
2024年6月27日作成
はじめに
2022年から台頭した生成AIは、教育業界にインパクトを与えています。特に、生成AIを活用した授業実践を行い、より効果的に授業を運営したいと考える方も少なくありません。
現在、デジタルハリウッド大学(https://www.dhw.ac.jp/)では、生成AIを活用した授業の在り方を探求しています。そこで今回は、生成AIのひとつであるAdobeFireflyを活用して授業に取り組む小倉以索教授にインタビューをしました。
小倉教授プロフィール
千葉工業大学 工学部電気工学科卒業、デジタルハリウッド研究所研究生として、eAT KANAZAWAにて特別賞を受賞し退所後、フリーのCGデザイナーとして活躍。映画「劇場版銀河鉄道999」「ハッピーフライト」、ゲームソフト「デッド オアアライブ」ライブビデオ・DVD「ウラスマ」(スマップ)、TV番組「たけしとひとし」、iPadアプリ「中田英寿2010南アW杯」、などのCG担当やその他CMのCGなど多数手掛けている。また、1999年からデジタルハリウッド講師として人材の育成にも注力している。
デジタルハリウッド大学 教授・教員紹介
Q: 小倉先生の授業の概要を教えていただけますか?
A: 「CGショートフィルム」という授業を担当しています。100名程度の学生に、主に3DCGを使ったショートフィルム制作をテーマに、ストーリーの作り方や企画の立て方などを学びます。
Q: 授業の中でどのAIを使っていますか?
A: 授業ではAdobe Fireflyを使用しています。他には、生徒にはAdobe Fireflyのみを使わせていますが、私自身は調べ物やまとめを行う際にChatGPT-4を利用することもあります。例えば、物語を学生に提示する必要があるときにChatGPTを使って簡単に物語を作成しました。
Q: 学生にAdobe Fireflyをどのように使わせていますか?
A: 学生には、最終的にショートフィルムの企画書を提出する課題を与えています。文字だけではつまらないので、画像を載せるように指導しています。写真を撮ったり、イラストを描いたり、CGを作ったりすることが苦手な生徒もいるため、今年は全員にAdobe Fireflyを使うことにしました。
(最終課題の条件)
Q: 学生にAdobe Fireflyを使ってもらう上で工夫したことはありますか?
A: 使ったことがない学生もいるため、授業中に一度練習として使用する時間を設けました。最終課題で使うことを目的としていますが、練習で使うことも大切だと思っています。
また、 本学の学生はAdobe製品を無料で利用できるため、せっかくの機会なのでAdobe Fireflyも使用させようと思いました。学内でお金を払っているため、学生には無料で利用可能ということを伝えました。
Q: 小倉先生がデジタルハリウッドの教員として、生成AIツールに対して保守的だったことはありますか?
A: いえ、私は常に新しい技術を積極的に取り入れようとしています。Adobe Fireflyを使うのは今回が初めてですが、学内で使用を促進する先生も多いです。実際、今年の教員研修は生成AIの活用研修でした。
Q: Adobe Fireflyを授業に取り入れたのはいつ頃からですか?
A: 今年の4月からです。最新バージョンのAdobe Fireflyのクオリティが非常に高かったので、授業に取り入れることにしました。当初の授業計画には含まれていませんでしたが、すぐに取り入れることを決めました。
Q: Adobe Fireflyを取り入れたことで授業はどのように変わりそうですか?
A: 具体的な成果はまだわかりませんが、期待している効果はたくさんあります。例えば、去年も同じ課題を行いましたが、今年はAI生成の画像を使用することで、物語のイメージが直感的に伝わりやすくなることを期待しています。昨年は50人規模で行いましたが、今年は100人の規模で、AIを使った画像が企画書にどのように影響するか楽しみです。
(AdobeFireflyを学生に説明する時に使用した資料の一部)
Q: 生成AI活用のデメリットはありますか?
A: 再現性の難しさがデメリットです。生成した画像を再度作成する際に、同じプロンプトを忘れてしまうと、同じ画像を生成するのが難しいことがあります。また、間違えて別の生成ボタンを押してしまうと予期せぬ結果が出ることもあります。
Q: 学生が生成した画像を使用していますが、シナリオの文章もAIに作らせることは許可していますか?
A: 特に許可しているわけではありませんが、学生によっては利用することもあるでしょう。私には見破る力もないので、特に問題視していません。重要なのは企画の質であり、優れたショートフィルムの企画ができれば、AIを使っても問題ないと考えています。
Q: 今後、どのように生成AIを使いたいですか?
A: 例えば、100年前の日本の風景に出てくる家具を再現するなど、AIを使って複雑な画像を生成することが考えられます。これにより、3D制作の練習にもなりますし、リファレンスとしてAI画像を活用する方法が増えるでしょう。現場でもリファレンスとしてAI画像を利用することが一般的なので、学生にもそのように使わせたいです。
Q: 生成AIを効果的に使う方法を教えていただけますか?
A: クリエイティブな分野であれば、リファレンスを作ってもらえたりして便利ですよ。例えば、ゲームのキャラクターデザインで困った場合、AIに具体的なプロンプトを与えてキャラクターを生成させることができます。これを基にして、3DCGのキャラクターに起こすなどの方法が有効だと思うので、積極的に使って欲しいですね。
Q: 学生がChatGPTを使って課題を提出することについてどう考えていますか?
A: 良い文章が出来るのであれば、ChatGPTを使っても問題ないと思います。大事なのは企画の質です。見分けられない場合は、それに労力を使う意味はないでしょう。使いたい人は使うべきです。
ところで、最近テレビで民主主義についての番組を見たんです。
自由に発言できるのが自由主義の良い所ですが、話がまとまらない場合もある。
一方で民主主義は多数決の世界で、3人が話して2人が賛成したら、多数の意見が優先されます。
この、自由主義と民主主義が合体して自由民主主義になるんですよ。
私は自由主義なので、どの先生がどういう風に生成AIを使うのかは自由で良いと思いますが、学校という枠組みでやりかたについて多数決を取るのことも有り得ると思います。
だからこそ、「AIを使いましょう」「AIを使うな」と、学校が上から命じるのはおかしいと思っています。僕は自由主義者です。自由で良いじゃないですか。
小倉以索教授
Q: 最後に、生成AIについて専門学校や大学の先生方へのメッセージはありますか?
A: Adobe Fireflyでしたら安心して使ってください。著作権の問題がほぼなく、安心して使えるツールです。他の生成AI(ChatGPTなど)での著作権やデータの吸い取りに対する恐怖は理解できますし、その恐怖は持つべきだと思います。ただ、Adobe Fireflyは安心して使ってもらえたらと思います。
まとめ
今回は生成AI(Adobe FIrefly)を活用した授業実践例についてご紹介いたしました。
デジタルハリウッドアカデミーでは、本学で得られた生成AIのノウハウを活かしたFD/SD研修をご提供しております。
詳しくは、ぜひお問い合わせくださいませ。
https://academy.dhw.co.jp/contact/
執筆者
萩原ちはる(デジタルハリウッド株式会社 まなびメディア事業部)
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