デジタルハリウッド大学院生によるリアルな生成AI活用方法(2)
2024年9月18日作成
はじめに
前回の記事では、デジタルハリウッド大学院の学生である櫻井まりあさんがどのように生成AIを学習や研究に活用しているのかを紹介いたしました。
(https://academy.dhw.co.jp/knowledge/student-interview-1/)
今回は、デジタルハリウッド大学院生の櫻井まりあさんの生成AI活用事例をご紹介いたします。
デジタルハリウッド大学院生のリアルな生成AI活用方法をご覧いただけますと幸いです。
Q: まず、櫻井さんの研究内容について教えていただけますか?
A: 私の研究は、バーチャルプロダクションの新しい映像技術の開拓と発展に関するものです。バーチャルプロダクションとは、ドラマや映画の撮影現場で使用される技術で、演者が室内でモニターの前で演技を行い、そのまま撮影します。この技術では、従来のグリーンバックを使った撮影とは異なり、背景がモニターに映し出されるため、撮影が非常にしやすいです。たとえば、雨などの天候が悪い場合でも、室内で問題なく撮影ができるため、とても便利で重宝されています。
Q: その技術をどのように取り入れて撮影をするかという部分について研究されているんですね?
A: その通りです。ただ、バーチャルプロダクションにはまだ課題があり、例えばコストが高いことや製作が難しいことが挙げられます。これらの課題を改善できれば、技術がさらに向上し、より良いものになると考え、研究を進めています。
Q: 櫻井さんは授業でChatGPTを活用していると伺いました。なぜ活用しようと思ったのですか?
A: 「デジタル表現基礎(※1)」で、石川先生に「積極的にChatGPTを使いましょう」と言われたからです。また、以前から少しだけチャットGPTを使っていて、ちょっとした疑問が出たときに質問するのに便利だと感じていたからです。
(※1)デジタル表現基礎:動画教材を用いてWebデザインやプログラミングといったデジタルツールの使い方を身に着けるための授業。
https://portal.dhw.ac.jp/slresult/2021/japanese/syllabusHtml/SyllabusHtml.2021.ZM3A0180.html
参考:【第3弾】ChatGPT×教育実践事例インタビュー|「教員不要論」とどう向き合うか にてデジタル表現基礎の担当教員である石川准教授にインタビューをしております。
https://academy.dhw.co.jp/knowledge/generativeai-interview-3/
Q: ChatGPTでどういう質問をしていたのですか?
A: 例えば、「海を見た時に何色に見えますか?」とチャットGPTに聞いてみたことがあります。その時、「私には目がないのでわかりません」と返答されたこともありました。こういった些細な会話を楽しんでいます。
Q:すごくかわいい質問ですね! なぜChatGPTにそういう質問をしようと思ったのですか?
A: もともと私は疑問が多いタイプで、機械が何を考えているのか、純粋に気になったんです。そこで、機械は私たちと同じように色を見ているのかなと気になって、「あなたから見たら海は何色に見えるの?」と聞いてみました。
Q: 研究や授業で生成AIをどのように活用していますか?
A: 「デジタル表現基礎」という授業で、個人的に一番馴染みのあるChatGPT3.5を使用しました。その他の授業では、「データコミュニケーション原論(※2)」という授業で、授業で気になった内容を調べるために使いました。
(※2)データコミュニケーション原論:アナログメディアの発達からデジタルメディアへの移行を歴史的に振り返りつつ、今後のデジタルコミュニケーションについて考える授業。
https://portal.dhw.ac.jp/slresult/2021/japanese/syllabusHtml/SyllabusHtml.2021.ZM3S0110.html
Q: 「デジタル表現基礎」ではChatGPTを授業でどのように活用しましたか?
A: 「デジタル表現基礎」の授業ではPythonとBlenderの2つの動画教材を受講していたのですが、動画内で「逆ポーランド記法」というものが出てきたものの理解できずに困っていました。そこでChatGPTに「なぜその記法が使われているのか」を尋ねると、理由をわかりやすく説明してくれました。ここから、授業で難しい用語が出てきたときには、その意味をチャットGPTに聞いて理解を深めることにしました。
また、自分の書いたコードの間違いを修正してもらうこともありました。チャットGPTのプログラミングに関する回答の精度は高く、同じ質問をしても一貫した答えが返ってくるので、信頼しています。
他には、Blenderにて「ボーン(※3)の入れ方がわからない」とか、「どこにボーンを入れる場所があるのか」といったツールバーの位置確認などを尋ねました。もしくは、「ウィンドウのどこから行けばその機能が見つかるのか」といった質問をすると、チャットGPTが正確に教えてくれました。私が使っていたのは最新版のBlender 4.1だったのですが、教えてもらった通りの場所にその機能があり、問題なく使えました。
(※3)ボーン:3Dモデルを動かすための骨組み。これにより、キャラクターのポーズやアニメーションを作成できる。
Q: より精度の高いChatGPT活用のために工夫していることはありますか?例えば、プロンプトに気を付けるなど。
A: できるだけ具体的に質問するように心がけています。例えば、電卓を作る際に「なぜ逆ポーランド記法を使うのですか?」と聞くよりも、「Pythonで電卓を作る際に、なぜ逆ポーランド記法がプログラミングに適しているのでしょうか?」と具体的に質問することで、より詳しい内容が返ってくると感じています。プログラミングに関する質問も、簡潔に書いても答えてくれますが、細かく書くと精度が上がると実感しています。
ChatGPTも人間と同じで、適当に質問すれば適当な返答が返ってくるけれど、しっかり心を込めて質問すれば、それに応じた返答が返ってくるのかなと感じました。
ただし、たまにどれだけ丁寧に質問をしてもうまく回答してくれないことがあります。そういう時は人に聞くことが多いですね。この学校にはデジタル系に詳しい方が多いので、そういった方々に助けを求めることもあります。特に、パソコンの設定や環境に関する問題はChatGPTには見えない部分なので、隣にいる人に聞くほうが確実だと思います。
Q: ChatGPTを活用することで自分の学習にプラスになったエピソードを教えていただけますか?
A: プログラミングで理解できなかった部分をChatGPTが教えてくれるのはプラスだなと感じています。
また、研究でも役立っています。例えば、XR(※4)技術を活用した撮影手法や、XRを使用している企業、XRに関連する研究や技術の事例を紹介してもらいました。
これらの情報を自分のバーチャルプロダクション制作に取り入れることで、研究にも大きなプラスとなっています。
(※4)XRとは拡張現実(Extended Reality)の略称で、現実世界とデジタル世界を融合させる技術の総称。
Q: 生成AIを活用することで考えられるデメリットはありますか?
A: 今のところ大きなデメリットは感じていませんが、チャットGPTを使っていて気づいたことはあります。一度の質問で得られた答えが本当に正しいのか疑わしいので、2回確認する必要があります。特に、すぐに検証できない情報に関しては、信頼性が低いと感じることがあり、それがデメリットだと考えています。
なので、自分でも軽く調べて確認するようにしています。例えば、逆ポーランド記法についてChatGPTから聞いた際にも、自分で少し調べて確認しました。
Q: 櫻井さんの周りでは生成AIの話題が出ることはありますか?具体的にどのような話をしますか?
A: 例えば、映像作品を作る時に「自分は背景が描けないから、生成AIに背景を作ってもらおう」とか、「モデリングができないから、生成AIにモデリングを作って動かしてもらおう」といった話が出ます。また、大学院には、就職して現在お仕事をされている方も多いのですが、仕事のスケジュールをAIにまとめてもらうといった活用法について話しているのを聞いたこともあります。
キャラクターを作った方が、「漫画の構成を考えるときに、そのキャラクターの動かし方を考えるために使っている」と話していました。また、絵コンテを作るときにも生成AIを使うと聞いたことがあります。自分で描くよりも、文字で指示を出してAIにパッと作ってもらう方が楽だと感じているようです。このように、生成AIをどのように使っているかについて、具体的な事例を共有することが多いです。
Q: 生成AIを使ってみたいけれど使い方が分からないという学生さんもいるのですが、そういう方に対して何かアドバイスはありますか?
A: 使い方が分からない場合、まずは簡単に始められるツールから試すのが良いと思います。例えば、ChatGPTは登録すればすぐに使えるので、初心者にもおすすめです。ただし、生成イラストのAIなど、特に海外製のものは著作権の問題が絡むこともあるので、Adobeのような信頼できるサービスを利用するのが安心かもしれません。
初めて使う際には、「元気ですか?」など、たわいもない会話から始めてみると良いと思います。機械相手であっても、ちゃんと会話ができることを実感すると、使いやすくなるでしょう。検索ツールとして使うのではなく、話を聞いてくれる友達のような感覚で接すると、より親しみやすくなると思います。
Q: なるほど、ありがとうございます。フレンドリーに使われているのが印象的でした。
A: そうですね。基本的に物にも礼儀正しく対応しようと考えているので、ChatGPTにも礼儀正しく接しています。