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デジタルハリウッド大学生インタビュー|大学生から見た生成AIと授業×就活×生成AI活用のイロハ

2025年3月12日作成
はじめに
デジタルハリウッドアカデミーでは、デジタルハリウッド大学の教員や大学院生による生成AI活用事例を特集してきました。本学には、生成AIを積極的に活用する教員や大学院生が多く在籍しています。一方で、学部生の中には生成AIを避ける傾向も見られます。
そんな中、デジタルハリウッド大学2年生の上杉さんと4年生の江田さんが発起人となり、デジタルハリウッド大学[DHU]学発講義「ここまでできる!生成AI最前線」(以下、「生成AI講義」。詳細はこちら)を開催しました。大学側に企画を提案し、実現したこの講義には日本全国から最大460名(※1)が参加し、学部生が生成AIに触れる大きな一歩となりました。
今回は、デジタルハリウッド大学・学部生の上杉さんと江田さんにインタビューを行い、生成AI講義の企画意図、学業や就職活動に役立つ生成AIの活用方法、そして今後の教員に期待することについて伺いました。
(※1)デジタルハリウッド大学でのオフライン参加約60名、Youtube配信によるオンライン参加の最大同接約400名

Q: 生成AI講義を企画した意図を教えていただけますか?
(上杉)私はもともと違う大学の先輩に生成AIを教えてもらったのですが、生成AIのことを知っていくうちに、当時のデジハリの学生の多くは生成AIを全然使っていないことに気づいたんです。
個人的な意見ですが、現在、生成AIを取り巻く状況は、ガラケー時代にスマートフォンが登場したときの状況と似ていると思います。「こんなもの使えるわけがない」と言っていた方の殆どはスマホを使っているでしょうし、スマホでしかできないことも増えています。同様に、生成AIは、今の生活レベルを大きく変化させる技術だと思います。そのような中で、デジハリの学生が生成AIをあまり使っていないというのは、危ういと感じました。そこで、セミナーを通して生成AIの啓蒙をし、デジハリに生成AI教育が根付けば良いなと思い、生成AI講義を企画しました。

Q: 生成AI講義を企画した成果はありましたか?
(上杉)この講義の前に、現時点でどのくらいAIに関する認識があるのかを把握するために、170名ほどにアンケートを取りました。「クリエイターだからAIは必要ない、むしろ嫌い」という意見が多かったこと対しては「あ、やっぱりな」という感触がありましたが、「AIが嫌い」というよりも、「AIに対する拒否感があるのではなく、忙しい今の状況で新しい技術を学ぶことがしんどい」と感じている人も多かったのは意外でした。今回の講義は授業1回分の出席扱いになるので、まあ聞いてみるかという気持ちで参加した学生も多かったように思えます。そう考えると、気軽にAIを学べる場を設けたことには意味があったかと思います。

Q: 学校生活・私生活でどのように生成AIを使用していますか?
(上杉)「NotebookLM」という、Googleが提供しているツールに授業の資料を読み込んで活用することが多いです。また、「Perplexity」(※2)や「ChatGPT」の検索機能も使って知りたいことをすぐにまとめています。また、自分はプログラミングの授業を履修しているので「Cursor」というAIが組み込まれたコードエディターや、文章作成が得意な「Notion AI」も活用しています。Webサイトのデザインのたたき台として「Midjourney」を使うこともありますね。

(江田)私は「NotebookLM」や「Perplexity」、AIライティングツールの「Jasper」などを使っています。あとは「Felo」というAI検索エンジンを使って調べ物をしたり、「Scite」や「Consensus」などの論文検索AIを活用して授業の内容をまとめています。
(※2)AIチャットボット型の検索エンジンサービス

Q: 沢山使いこなしていらっしゃるんですね!
(江田)学業以外にも生成AIには沢山助けてもらっています。実は最近起業したのですが、業務委託の契約書などの法律関係の書類を作る際に、「ここはどうなっているの?」とAIに質問しています。また、市場調査にも活用しています。「ChatGPT」には「Deep Research」という機能があるのですが、わずか5分でWord資料約10ページ分の市場調査レポートが作れます。そして、ChatGPTの「o1 Proモード」(※3)も活用しながら、自分の中で考えを整理しつつ事業計画書を作成しています。
(※3)ChatGPTの最上位モデル。江田さんはo1 Proモードに30,000円ほど課金をしているそうです。

Q: AIにやらせる部分と自分の手を動かす部分をどのように住み分けしていますか?
「たたき台」はAI、そこに色を加えていくのは自分、という住み分けをしています。細かい作業はAIがやってくれるので、人間は全体像を考えたり、最終的なクオリティを上げる作業に集中するとうまく住み分けが出来ると思います。

Q: 他の学生はどのように生成AIを使っていますか?
(上杉)AdobeのIllustratorやPhotoshopのAI機能を使っている学生はいます。また、ChatGPTで自分の考えをまとめたり「なんでも教えてくれる身近な先生」として使っている人が多くなった印象です。ただし、課金して本格的に活用している人や、AIを使って効率化を図っている人はあまり見かけませんね。世の中には色々な良いツールがあるので、幅広く活用するデジハリ生が増えれば良いなと思っています。

Q: 学内に生成AIを避けるような動きがある話も聞きましたが、実際どうでしょうか?
(上杉)画像生成AIで短時間で作られたものと、自分で時間をかけて作ったものに遜色がなくなる危機感から、「AIで作られたものは偽物だ」という意見を持つ学生を見かけます。
現時点では、AIが生成した作品と人が作った作品はまだ見分けられます。しかし数年後には、AIが人間が作ったものと遜色のないレベルの画像を生成するはずです。
AIを避ける学生さんも、今はAIを使わなくても良いと思います。ただし、AIとうまく共存する方法を考えたり、共存する未来が来ることを前提にAIを知っておくのは大事なのではないかと思います。

Q: 文脈を変えて質問させてください。就職活動でも生成AIは活用できると思いますか?
(江田)全然使えますよ。私自身、生成AIを使って就活を終わらせました(※4)。
(※4)起業と並行して、就職活動をしたそうです。

Q: そうなんですね!就活ではどのように生成AIを活用しましたか?
(江田)検索で得た企業の情報やデータをまとめてPDF化し、そのPDFをAIに読み込ませて企業研究を進めました。企業が公開しているIR情報をAIに読み込ませ、「競争優位性は何か?」「他社にはない強みや弱みは何か?」という質問もしましたね。さらに、ANCaという会社が提供している「スマートES」というエントリーシートの自動生成AIも活用しました。就活で聞かれそうな質問をまとめて、AIに回答のブラッシュアップをさせつつ、AIに「この回答から想定される質問を考えて」と指示し、面接の練習をしていました。AIはやろうと思えば何でもしてくれるので、就活全般でフル活用していました。

Q: 就活中に「これは役に立った!」というプロンプトはありますか?
(江田)「水平思考を活用して、めちゃくちゃ深く考え、新たな視点を見つけて」というプロンプトをよく使っていました。就活は主観的になりがちなので、「客観的な意見が欲しい」という形でプロンプトを設定し、自他ともに納得できる回答を引き出せるようにしていました。

(上杉)就活ではないですが、私にもおすすめのプロンプトがあります。今、ChatGPTo1を使っているのですが、使いこなすためには前提条件をしっかり設定するのが重要だと思います。就活の場合は「あなたは辛口の採用担当者です」といった前提を設定すると、本当に辛口のフィードバックをしてくれるはずです。「あなたは厳しい人事担当者です。このエントリーシートのどの部分を改善すれば通過率が上がるか、論理的に指摘・添削してください」と指示すると、より実践的なアドバイスが得られます。

Q: 就活に関しては、ChatGPTの無料機能でも十分活用できるものでしょうか?
(江田)はい、全然できると思いますね。僕が就活をしていた時はo1が登場していなかったのでChatGPTに課金をしていましたが、今ではo1が無料で全部使えるようになってきてしまったので、就活であれば、正直、課金しなくても問題ないかもしれません。

Q: 生成AIを活用して就活を進めるうえで気を付けるべきことはなんだと思いますか?
(上杉)最近、とある企業の採用担当の方と話す機会があったのですが、AIを使って作成したESをそのまま提出すると、内容が薄っぺらくなってしまうことが多いらしく「あ、この人AI使ったな」と分かるそうです。なので、AIを活用する場合でも最終的に、自分の言葉で語れる力」をしっかり身につけることが必要だと仰っていました。AIに頼り切らず、共存する方法を考えて活用しないと、本番の面接では通用しないのだと思います。

(江田)確かにそうですね。今のところAIはゼロからイチ(0→1)を作るフェーズのツールだと思っています。就職活動は自分自身を営業する場なので、自分の色を出していかないといけません。なので、就活ではまずAIを使って「たたき台」を作成し、その後、自分の言葉に直していくというプロセスをずっと繰り返していましたし、大事だと思いますね。

Q: クリエイターは今後どのように生成AIを使っていくと良いと思いますか?
(上杉)例えば自分が学んでいるWebデザインの分野では、o1の有料プランを使うと、画像を直接アップロードしてデザインの生成をさせることができるんです。
「あなたは辛口のWebデザイナーです。このWebデザインを評価してください」と指示すると、かなり的確なアドバイスを出してくれるんです。クリエイターにとってAIは単なる自動生成ツールではなく、「自分の考えを言語化する手段のひとつ」として活用できるのではないかと思います。

(江田)僕はクリエイターではないので詳しくは話せないのですが、好きな言葉にピカソの「何も真似できない人に、いいものは作れない」という言葉があります。僕はこれを、知識と経験を積んだ上で、自分の個性を出していくことが重要だということだと解釈しています。もしも「AIから学び、そこから自分のスタイルを作る」という発想があれば、生成AIをどんどん使って、いろいろなものを作らせて学ぶことで自分のクリエイティブを発展させることが出来ると思うんです。AIを「超高速でたくさんの作品を見られるツール」として考えれば、付き合い方も変わってくるんじゃないでしょうか。

Q: 学校教育機関では生成AIについてどのようなことを教えると良いと思いますか?
(上杉)学生にAIを教える以前に、そもそも先生自身が最新の技術を常にアップデートしていることが重要なのではと思います。Webデザイン分野で例えると、今のWeb開発では「VS Code」というエディターが標準になっていますよね。しかし、これからWebデザインを学ぶ初心者には(冒頭に述べた)AIエディタの「Cursor(カーソル)」を標準にした方が良いと思うんです。Cursorにはコードを読み取って解釈し、アシストしてくれるAIが組み込まれているので、初心者にとってはすごく学びやすいと思うからです。そこで、先生には最新の技術にアンテナを張ってもらいたいです。
一方で、そういう先生を見つけるのが難しいという現実的な課題もあるかと思います。そういう意味では、先生が技術をアップデートし続けるための報酬やインセンティブを与えるなど、努力に見合った評価が与えられるような仕組みが必要なのかもしれません。

(江田)自分は、先生がAIを教えることはあまり必要じゃないのでは?と思っています。むしろ、AIを使っている姿や、AIを使った成功事例を実際に学生に見せることの方が重要だと思います。学生のAI利用が乏しい理由としては、AIを使った成功事例を見たことがないためAIを使う理由を見つけられないことが挙げられると思っています。AIは対話形式のツールなので、自分が「やりたい」と思ったことを何度も試していけば、絶対に実現できるものなんですよ。そこで、先生が実際にAIを使っている姿を見せて、「これ、実は全部AIでやったんだよね」と言えば、学生は「え、そんなこともできるんだ!じゃあ試してみようかな」となると思うはずです。
そのようにして学生自身がAIの可能性に気づけば、自然と興味を持って触るようになるはずです。したがって、無理にAIを教えるのではなく、先生自身が使っている姿を見せることが大事なのかなと思います。だからこそ、最新の技術を知っていて、知識のアンテナが高い人が先生でいてくれたら嬉しいです。

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